2008年1月22日

映画:暗殺・リトビネンコ事件(ケース)

うさ評:★★★☆☆

友人Mの映画レビューを読んで、やはり観たくなったこの映画。今週で上映終了とのことで慌ててユーロスペース@渋谷まで行ってきました!

2006 年11月、当時日本でもニュースで報道されたロンドンで起きたある男の毒殺事件。その男とはアレクサンドル・リトビネンコ。イギリスに亡命中の元 FSB(ロシア連邦保安庁)中佐。彼は98年にFSBの元同僚らと共にFSB内で行われている数々の腐敗、汚職、反体制派への暗殺指示などを記者会見で告 発。その後イギリスに家族と亡命し、チェチェン戦争の裏側に潜むプーチン政権とFSBの暗躍を告発。そして、とうとう放射性物質ポロ ニウム210を飲まされ、法治国家イギリスで暗殺される。。

この事件は英国の内務省情報局保安部(MI5)と外務省情報局秘密情報部 (MI6←007のジェームス・ボンドが所属しているとこですね、笑)が捜査に乗り出し、昨年5月、旧KGB(ソ連国家保安委員会)元職員で現在は実業家 のアンドレイ・ルゴボイを容疑者として発表し、イギリスはロシアに身柄引き渡しを要請するもロシア政府はこれを拒否 。事件は未だ未解決のまま。

本作品は亡命後の彼を5年間に渡り取材したドキュメンタリー映画。彼はなぜ死ななければならなかったのか!?リトビネンコと取材を通して親交を深めていった本作品の監督アンドレイ・ネクラーソフもイギリス当局から事情聴取を受け、自宅は何者かに荒らされた。

ちょっと前置きが長くなりましたが、一人のモラルある男が起こした「反乱」(リトビネンコは彼の告発をこう呼んでました)が、見事にロシアという巨大国家に握り潰されてしまう恐ろしさ。一体ロシアは民主国家なのか?軍事独裁国家なのか?
プーチン政権が関与したと思われる数々の収賄や反体制派への暗殺事件など、細かいことはその他のレビューで読んで頂くとして、うさうさの率直な感想を。。

ロシアが鉄のカーテンで閉ざされた社会主義国家から民主国家へ変わったのはつい16年前のこと。16年も前ではなく、まだ16年しか経っていない。。
だっ て、それまでのロシアは今の北朝鮮以上に完全なる軍事独裁国家を69年間も続け(しかも他民族とあんなに巨大な国を抱えて)、完全に言論とイデオロ ギーを統制し、日々人々が密告と制裁に怯えて暮らす一方で共産党の一部エリート達だけが私利私欲をむさぼり続けていたワケですからねー。

さ らにそんな独裁国家に欠かせない諜報機関&秘密警察であるKGBがナチスのゲシュタポ同様に圧倒的権力を握っていたワケで、そんなKGB出身のプーチン (彼はKGBの後身であるロシア連邦保安庁の長官まで務めている)が大統領なんですから、そりゃあ、ロシアが怖い国なのは今でも変わらないでしょうし、体 質や裏社会はそう簡単には変わらないよね・・というのが率直な感想でした。

まぁ、 昔のソ連を知らない今の若い人には信じられない話なのかもしれませんね。。あと、やっぱりうさうさはそんなソ連時代を現地で過ごしていたこと、もちろん子 供だったのでポコちゃんのような直接的な実感はありませんが、幼稚園ではレーニンを賞賛していた記憶もありますし、一度隣国フィンランドから戻る際に チョットした手違いから国境警備隊に銃を向けられたこともあるし、何やらとっても怖い国らしい!?という印象がフツーの人より強いのかもしれませんね。

それよりも、なぜこんなに独裁的なプーチンが国民には圧倒的支持を得ているのかなど、ロシアの国内情勢をもう少し拾ってほしかったかなぁ〜。
それにしても毒殺って・・意外と古典的な手口ですよね!?しかもヒ素とかではなく「放射性物質ポロニウム210」って、全くワケ分かんないモノだし。まぁ、ロシア国内じゃないから、簡単に銃殺というワケにもいかないんでしょうが。。

最終週とあって観客も10人程度でしたが、うち2人は初老のロシア人女性でした。なぜか良く分からないところで笑ってました。ナゾだ!う〜ん、感想を聞いてみたかったな(笑)もちろん本国ロシアでは未公開です。

2 件のコメント:

morimori さんのコメント...

早速のレビュー、楽しく拝見させて頂きました。私が行った日曜日はほぼ満席の大入りでしたよ。やはり平日は空いているのでしょう。在日露人にとっては興味深い映画でしょうね。日本くらいでしかこの映画を見る機会はないのでは?そういった意味でも日本って開かれた国だと思う。でも一息に殺すのではなく、3週間も苦しんだ末に死に至らしめるというポロニウムを使った毒殺と言う手は、かなり劣悪だと思います。人間の風上にも置けませんね。

吉村うさうさ さんのコメント...

死ぬまで3週間ですか?!(驚)それは銃殺よりヒドいですね。見せしめ的なトコもあるのでしょうか・・。
内部告発は日本でも最近よくありますが、ロシアのようにアッサリ消されちゃうというのは、全くもって治安国家とはいえませんよね〜。

インタビューアーの監督が容疑者となっているアンドレイ・ルゴボイから紅茶を勧められて、ものすごい勢いで断っていたのに笑いました(笑)

ポコちゃんは未観だそうです。彼の活動範囲はヨコハマだけなので、こういう単館系のいい映画を観れないのを残念がってました。