2007年9月12日

映画:ミリキタニの猫

うさ評:★★★★★!(満点)

別に意図してないんですけど、なぜかまたまたドキュメンタリーです(笑)

01年9月11日、世界貿易センタービルに2機の飛行機が突っ込みビルが崩壊。粉塵が舞い散り人々が驚愕し騒然としている中、一人のホームレスの老人はいつものように黙々と猫の絵を描いていた。

ジミー・ツトム・ミリキタニ。(ちなみに漢字だと→三力谷)
アメリカ生まれの日系人。

3歳から18歳までは親の出身地・広島で過ごすが、画家として自分の才能を開花させるため、自由の国(母国でもある)アメリカへと戻った。
が、 彼を待ち受けていたのは第二次世界大戦勃発に伴う日系アメリカ人の強制収容という過酷な運命。そこで日系人たちはアメリカ政府に市民権放棄を迫られる。
その政府の理不尽さに怒り、市民権を放棄したミリキタニ氏。以来、彼は一度も日本へ戻ることもなく、アメリカでの市民権もないまま、収容所での歴史的事実を消し去らないために、戦争を憎み平和を願い、絵を描き続けながら不屈の人生を歩んで行くことに。。

本 作品を撮影した猫好きの監督は、いつも通る自宅近所の路上で猫の絵を描くアジア人男性に興味を持ち、施しも兼ねて彼の絵を買おうとするのだが、「カネはい らない!自分の写真を取ってくれ!」と奇妙な依頼をする。。彼は才能溢れる画家としての自分の存在と彼自身が「マスターピース(傑作)だ!」と絶賛する自 分の作品をこの世に記録したかったようだ・・と後に監督は解説している。

市民権がない彼は当然社会保障も受けられないから路上生活。監督が何度も市民権回復の申請を勧めるが、強制収容所での忌まわしい記憶やアメリカ政府に対する抵抗心ゆえ、頑なに拒否し続けるところがまたスゴイ!
戦争で受けた恨みつらみを言う訳でもなく、淡々と滲み出て来る反骨精神。それは強制収容所での辛い過去と、人種に関係なく自分はアーティストである!という確固たる信念からくるものなんでしょうね。。

フィ ルムの中の彼は、「え〜、こんな英語で70年近くもアメリカで生きて来れたんだぁ〜」と感心するくらいのブロークン・イングリッシュ(笑)。時々日本の古 い 歌を鼻歌まじりで歌い、サムライ映画が大好きな一見フツーのおじいちゃん。これだけ激動の人生を歩んでいながらも、いつもどこ吹く風という天衣無縫ぶりは 天性の芸術家らしい(笑)しかもなんとも時代遅れのようなサムライ・スピリッツ言動が可笑しくもあり(笑)

終盤、頑なにアメリカに背を向け生きて来た彼も、いろいろな事実が分かり始め(ネタバレになるので詳しくは書きませんが。。)、その固く閉ざしていた心を徐々に開いて行く・・。

90間近になった彼は最後に自分の生まれ故郷であるアメリカが自分にした過酷な仕打ちを「赦す」ことになるのですが、かなりジ〜〜ンときましたね。。
監督の「どれほど深い傷を負っても、彼のように高齢になってからでも心癒されることがあるんだという事実は、観客に希望を与えると思う」という言葉にも考えさせられる所がありました。。赦しこそが癒しなのだよね・・。

ホームレス、戦争、強制収容所と言ったキーワードで暗い映画のように思っていたのですが、むしろ観終わった後は素直に「いい映画だったね〜」と心が清々しくなるような秀作でした!

またあの「911テロ」でパニック状態の中で、絵を描き続けていた見も知らずのホームレス老人の身を案じ、自宅に引き取った本作品の監督(しかも女性です!)の、懐の深さというか人間味にも感動しました。アメリカもいいとこあんじゃん!みたな(笑)

うさうさ初の★5つ(満点)作品。ぜひ見て欲しい作品です!


*初満点かと思っていたら、既にありましたね、満点作品。。(笑)

2 件のコメント:

Tomoko さんのコメント...

今頃、遅コメントです。
最初のかたくなさが嘘の様に、最後は穏やかなおじいちゃんアーティストになりましたね。いっぱい苦労があっただろうし心も閉ざしきって孤独も感じ無くなっていただろうに晩年(超晩年)は思い出の地へ行ったり思いがけない人と会えたり、きっと幸せだよね〜。
切なくないドキュメントなんてあんまりないもんね。

吉村うさうさ さんのコメント...

こんにちわ!
この映画、今のところ上半期ベストです(笑)
やっぱり人間癒されるって大切だけど、それは他人から癒されるのではなく、自分の気持ち次第なんですね。。とはいえ、あの監督と出会わなければきっと今でも前と同じ路上生活をしていたのかと思うと、監督を「娘です」というおじいちゃんの心情も分かるなぁ〜(笑)
う〜ん、いい映画でした!