2007年6月5日

映画:あるスキャンダルの覚え書き

うさ評:★★★★★(満点♪)

久々の映画感想♪
最近なかなか観たい!と思う映画がない中で、コレは絶対観たかった!
03年イギリスのブッカー賞最終候補に残った小説が原作。内容もすごかったけど、何と言っても役者が最高!ケイト・ブランシェットにジョディ・デンチ。このふたりの「柔と剛」の演技が素晴らしかった!

ふたりの「孤独な女性」が織り成すサスペンス・ドラマ。詳しいストーリーはどこかで読んで頂くとして(笑)、かくも孤独やコンプレックスが人間にとって恐ろしく、いかに精神を病ませるものなのかと、背筋が寒くなること必至です!


ケイト・ブランシェット演じる「シーバ」とジョディ・デンチ演じる「バーバラ」。ふたりは互いに方向性は違うけど、コンプレックスを抱えたとても孤独な人間。

中 流階級に属し(イギリスでは属する階級が非常に重要!)、著名な経済学者の父を持ち、大学教授で優しい夫と2人の子供に恵まれ、ハイゲートにある大きなテ ラスド・ハウスに住むシーバ(ちなみにハイゲートに住んでいるという言葉だけで、イギリス人には「あ〜、そういう階級の人なのね」と、 所属階級が瞬時に分かる、笑)。
でも彼女自身は美人であること以外に特に才能もなく、安定しているけど歳の離れた夫との刺激のない生活や、ダウン症の息子の世話などで精神的にもやや情緒不安定ぎみ。自分に対して、何に対しても自信が持てずにいる孤独な女性。

片やバーバラは低所得者層(ワーキング・クラス)の子供たちが通う公立総合中学のしがない歴史教師。
「自 分は孤高である」と思っているが、実際はそのプライドの高さ&偏屈さ、さらに「私はあなた達とは違う!」という人を蔑んだ皮肉的な言動から、同僚からも疎 まれ、友達すらいない(飼い猫が唯一の友達)、定年間近な孤独な独身女性(spinster)。彼女自身はなぜ人が自分に寄り付かないのか、なぜ自分に 友達ができないのか、その原因を顧みることができない以前に、自分が嫌われていることにすら全然気が付いていないという救い難い人物。


そして物語は、バーバラの勤務する学校へシーバが美術教師としてやって来たことから始まるのでした・・。


人間誰しもどこかで孤独を感じることがあるはずだし、自分たちの周りに意外にシーバやバーバラ症候群のような人はいるんじゃないでしょうか。特に女性であるなら、どちらか、あるいは両方に感情移入できる映画だと思いました。

もうね、シーバとバーバラという非常に個性的なキャラをふたりの大女優が見事に演じ切っていますね!

特 に印象的だったのは、スキャンダルを起こし、バーバラの家に匿ってもらっているシーバがとうとうバーバラの日記を見付け、コトの真相を知るのですが、最後 マスコミの前に飛び出し「Here I am!! Here I am!!(私はここよ!ここにいるわよ!)」と言って絶叫するシーン。
自分が分からず、不安定で危うくて、すぐに誰かの庇護を求めてしまうシーバが初めて「自分」を訴えた瞬間だったように思います。

あ と妄想爆進中のバーバラが日記の中で「南仏にあるシーバの別荘へ一緒に行こうと誘われた」と書かれてあるのをシーバが見て、呆れ顔で「あんなのただの社交 辞令よ!」と言うと、「あらそう。じゃあ行かないわ」と何事もなく返すバーバラの「勘違い妄 想癖」の痛々しさ(苦笑)。いる〜、いるよ〜、こういう場の雰囲気が読めないヤツ〜(笑)

尺の短さ(92分)の割に、後半になるにつれ、変質的に執拗になってくるバーバラのシーバに対する愛憎ストーカー行為に(コレが怖いのなんのって、笑)グイグイと引っ張られ、2時間くらい見たように感じました(笑)

欲を言えば、もっと最後までドロドロして欲しかったのに、意外とあっさり終焉に向かって行っちゃったなぁ(笑)

たぶん特に若い男性陣がこの映画を観ても「怖え〜、独身ババア!」とか「バカじゃね、この頭足りない女!」とか言われちゃいそうなので(笑)、女性同士で見に行くことをオススメします(笑)

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